2020/12/19
わ~るど・にじいろ・まつりを開催するにあたって
わ~るど・にじいろ・まつり実行委員会
実行委員長 藤田佳樹
(西宮市在日外国人教育研究協議会 会長)
近年、各地でさまざまな形で多文化共生イベントが開催されるようになってきています。それはマダン(韓国・朝鮮語で広場の意味)」といって、在日コリアンの集う「まつり」として各地で誕生しました。日本に住む外国につながる人たちは、その歴史や渡日の経緯によって、集住している場合もありますが、その多くは散らばった状態で住んでいます。そのため日本での生活は、自分の今置かれている状況を基準にしか考えることができず、孤立してしまうことがあります。しかし、同じ境遇にある人たちが集うことで、お互いをモデルとしてより広い視野で生活を創造することができるようになります。みなさんも、マイノリティーの立場に立ったとき、同じ境遇の人の支えが心強いと思ったことはありませんか。そういう意味で、在日コリアンを中心に集う「マダン」は大きな意味を持って続けられてきました。さらに近年、みなさんの街でも感じられていると思いますが、さまざまな理由で渡日した外国人が増え、多くの文化が混在するようになってきました。そこで、ルーツを限定しない誰もが参加してつながることができる多文化共生イベントが求められ開催されるようになりました。
多文化共生イベント「わ〜るど・にじいろ・まつり」もその一つです。参加した人は、たくさんの体験や展示、パネルディスカッション、ステージにおいて、それぞれの文化の理解が進み、多文化であることの良さを感じ取ることができているのではないかと思います。中には、自分とはちがう文化をもった人と交流し、「ちがいが豊かさにつながること」を体感した人もいたのではないでしょうか。同じ文化をもつ者同士がつながる場ではなく、文化にちがいがあることをしっかり理解した上でつながりを作っていく場でもあるのです。そして、多文化共生社会実現に向けて輪を広げていく場なのです。
「わ〜るど・にじいろ・まつり」は、関西学院大学教育学部の学生実行委員が中心となって活躍してきました。タイトルやテーマにはこれまでの学生の思いが込められています。「にじいろ」には、様々な色が合わさって美しく輝く虹のように、それぞれの文化を大切にしながらつながり合う多文化共生社会実現への思いが表されています。また七色の一色たりとも欠けてはならないという一人一人の存在の大切さと、それら全てが多文化共生社会を構成する一員であるという自覚、国際的な平和を実現する覚悟を表しています。
将来、学生実行委員の1人1人が、教育の現場で1人1人の子どもの背景をしっかり認識した上で、背景に応じた教育を進め、大切に育んでくれることを大いに期待しています。多文化共生社会実現が、次世代への課題として引き継がれようとしている今、多文化共生社会実現への扉は、これら若い世代によって開かれなければなりません。
ルーツを隠していた子どもが、信頼できる友だちに自分の生い立ちを話したときに、「そんなの関係ない、そんなの気にしないよ」という、一見優しい言葉に見えるが、突き放されたような冷たい言葉を返されることがあります。国籍や渡日の経緯などは、本人にとってとても大切なことですし、その友だちにとっても関係ないことではないはずです。特に親しい友だちであれば、気にして一緒に考えてほしい事柄でもあるはずです。このような事例からも、他者の背景を知ることは、信頼関係を築く上でとても重要であると考えられます。これからの多文化共生社会は、「あなたの持つ文化の良さ、よく知ってるよ」「外国につながる人のしんどさもよく知ってるよ」「今はよく分からないけど、一緒に勉強していきたいんだ」というような、共生につながる言葉が、いつでも誰からでも出てくる、そんな社会になってほしいと願います。それを実現させることができれば、自分のルーツを隠す人もいなくなるだろうし、そのことで苦しむ人もいなくなっていくのではないかと思います。
「わーるど・にじいろ・まつり」等のイベントを開催し、参加者が増えるだけで全ての課題が解決するわけではありません。このようなイベントを企画することで「多文化共生社会」をイメージする。そこがスタートなのです。そして、1人1人が自分なりの行動を起こすことが大切なのです。
ぜひ、一緒に多文化共生社会実現に向けての一歩を踏み出しましょう。
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